認知症によく使われる漢方薬って?(その2)

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認知症の中核症状を改善する漢方薬

八味地黄丸

八味地黄丸は、「熟地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・牡丹皮・茯苓・桂枝・附子」を成分とする漢方薬で、「温補腎陽」薬といわれています。補腎薬の代表選手で、日本では古来より愛用されてきました。

大脳の前頭葉領域の血流量を改善し、脳の機能を計るテストの数値が改善する、との報告もあります。

冠元顆粒

冠元顆粒(冠心2号方)は「丹参・紅花・木香・ 川芎・香附子・芍薬」を成分とする漢方薬で、「活血化瘀」薬といわれています。丹参などの生薬成分が微小血管の血流を良くし、血管内皮細胞などへ働き、内皮細胞を強化します。

認知症は、アルツハイマー病、脳血管型、どちらも結果的に、脳の血流が悪化し、神経細胞に十分な栄養を供給できなくなるため、また最終的には神経細胞死によって進行していきます。

現在は実験段階で、冠元顆粒などの丹参製剤に中核症状(脳保護作用/抗アポトーシス/脳血虚後の血流低下の改善)と周辺症状(向精神作用)のどちらにも効果があると考えられています。

認知症のBPSDを改善する漢方薬

抑肝散

抑肝散は、「柴胡・甘草・当帰・白朮・茯苓・釣藤鈎」を成分とする漢方薬で、「平肝熄風、疎肝健脾」薬と言われます。清肝の柴胡・釣藤鈎と、養血活血・利湿健脾の生薬がバランス良く配合された処方で、基本は「小児の引きつけ」の様な症状に使われていました。

つまり、肝鬱脾虚による「怒りっぽい、イライラする、よく眠れない、食欲不振」といった症状を治療する方剤です。この処方で、認知症のBPSD(興奮や攻撃性、異常行動、睡眠障害)といった症状が落ち着く、とのレポートもあります。

※ その他、抑肝散加半夏陳皮、黄連解毒湯、当帰芍薬散、加味帰脾湯、補中益気湯、竹茹温胆湯、冠元顆粒など、個々の患者さんに応じて、色々な処方があります。

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認知症の漢方的な考え方

漢方には、「腎は骨をつかさどり、随を生じ、脳は随の海」という言葉があります。認知症などの脳の機能低下は「腎の精、随の不足」からくるものと考えられ、漢方的には、これらを補う補腎薬+血流を良くする活血化瘀薬が基本処方になります。

もちろん、体質、例えば「熱、痰」を改善する処方などを加える場合も有ります。 西洋薬と併用する場合も多く、また副作用は少ないためご家族にも喜ばれています。

ある講演会で、

「脳の細胞は再生しない代わりに、100%すべて活用しているわけでもない。何割か生き残っている細胞。その働きを活発(リハビリ)にすることで、機能は維持できる」

という話がありました。漢方薬を併用することで、できるだけ脳の機能を維持することができれば、と考えています。   

*1 iwasaki.K Arai,H . et al.J clin Psychiatry 2005.66(2) P248
*2 稲永和豊 筑水会神経情報研究所年鑑 2005 24 P1 (ツムラ資料より)
*3 漢方医学 Vol33 No2 2009(19)P343
*4 週刊朝日 漢方 2007増刊号 P70
*5 認知症・アルツハイマー病 林泰史 東京老人医療センター院長
*6 Neuroprotective Effects of Kangen-Karyu on Spatial Memory Impairment in an 8-Arm Radial Maze and Newuronal Death in the HippocampalCA1 Region Induced by Cerebral Ischemia in Rats Journal of Pharmacological Sxiences 109,424-430(2009)
*7 28P-pm173 全脳血虚モデルに対する冠元顆粒の神経保護作用に関する研究 第129年会日本薬学会(2009京都)
S7-3 高次神経機能障害と漢方薬 Effexts of Kampo-medicines on spatial memory impalrment induced by repeated cerebral inchemia in rats
28P2-pm107 冠元顆粒の中枢作用に関する検討 第127年会日本薬学会 富山 2007
*8 中医臨床のための方剤学 神戸中医学研究会

※ 服用する場合は自己判断せずに、医師、薬剤師にご相談下さい。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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