温清飲のポイントを解説!注意点や早く治るためのコツも紹介

アトピー性皮膚炎など赤くなる皮膚症状によく使われる処方として温清飲(うんせいいん)があります。名前から見ると「温めて冷やす(清)とはどういうこと?」となかなか説明の難しい処方ですが、漢方らしい処方のうちの一つです。

皮膚炎で有名な処方ですが、添付文書を見ると効能効果に

温清飲  体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎

と書かれています。皮膚病だけでなく女性特有の疾患にも使える処方です。不思議ですね。

目次

温清飲が適している体質

温清飲を症状から見てみるとややこしいですが、体質的にひとつずつ、考えていきましょう。

漢方的な体質として血虚の方に使います。血虚の概念は難しいのですが「少し枯れかけた木」を想像してみてください。何が原因かはわかりませんが、見た感じ木の表面が乾燥して、葉の付きが悪く、生命力が足りません。栄養がうまく全体に行き渡っていない感じ。

これを人間で言えば、肌に潤いが無く、唇が荒れる、肌が乾燥して痒い、髪の毛が荒れる、眩暈、ふらつき、あたまがぼーっとする、耳鳴り、頭痛、手足の痺れ、筋肉のけいれん、こむら返り、不安感、焦燥感、忘れっぽい、動悸、眠りが浅い、生理が遅れる、月経不順などになります。

すべて起こるとは限りません、こういったことが起こる可能性がある、ということです。

それに加えて、何かの原因で「熱」を生じています。熱とは体温でいうところの熱もありますが、交感神経の興奮も熱といいます。口が渇いたり、イライラしたり、眠りにくかったり。これも熱と呼びます。漢方では実熱・虚熱に分けて考えるので、処方が変わったりします。

こう考えると「血虚・血熱」、肌が潤わないために乾燥があり、熱があるために発疹・痒みが出てくる、まさしくアトピー性皮膚炎の症状ですね。ただ、温清飲、これだけですべての症状が改善するわけではありません。熱証が強い場合はまずは黄連解毒湯にしたり、他の処方との加減を検討するのがポイントだったりします。

2014080501

 温清飲の症例:本社でディスクワークを始めたら急に皮膚の症状が悪化した

39歳男性、地方の営業所から本社に呼び戻されてディスクワークの量が急に増えました。地方の営業所では上司もおらずノビノビと仕事をしていたのですが、本社に呼ばれてから上司と仕事に追われてイライラ。食事なども不規則になり、もともと小さい頃にアトピー性皮膚炎を発症していたのですが急に悪化してのご相談でした。眠りも浅く、ちょっとのことでイライラするとのこと。皮膚科にてステロイドを処方されているが、もう少しなんとか改善したいとのことです。

お話を聞くと、「仕事が原因」かとは思いますが、もちろん部署を変るわけにも行かず。上記の虚と熱が入り交じった状態ですので、温清飲ともう少し改善するのに別の処方を組み合わせてお勧めしました。もちろん、食事・食生活の改善も大切です。3週間程度で落ち着いてきて、内勤が終わるまで1年間ほど継続していただきました。

温清飲の症例:脂漏性湿疹とフケ

脂漏性皮膚炎には、乳母車に乗ってくる小さい赤ちゃんの「乳児型」と思春期以降の「成人型」があります。漢方薬局の店頭では、中年~ご高齢の「成人型」方が多い印象です。

「頭の中や髪の生え際に湿疹が出来て痒い」という相談やら、皮膚科で脂漏性湿疹と診断を受けたがなかなか改善しなかったとか、再発してしまった、という相談をいただきます。

西洋医学的には、カビの一種が増殖して炎症を起こすと考えています。漢方的には、カビなんて判りませんでしたから「異常な熱が体に籠もってしまい痰を生じる」と考えます。この考え方は素晴らしくて「異常な熱の原因はなんだろう」ストレスであったり、ホルモンの乱れであったり、寝不足や、食生活の異常かもしれない、根本的な解決のところまで踏み込むことが出来ます。

温清飲を基本として、ストレスが強ければ逍遙散を加減しますし、生活習慣の指導をしたり、カビを抑えるような洗髪剤も併用したりとして対応すると、徐々に脂漏性皮膚炎は改善していきます。※ひどい場合は病院を受診してステロイド外用剤をお勧めすることがあります。

ちなみに、脂漏性皮膚炎は、毛根への血流も悪くなることで脱毛にも繋がりますので放置しないようにしましょう。

処方構成

温清飲:当帰・地黄・芍薬・川芎・黄芩・黄連・黄柏・山梔子

四物湯と黄連解毒湯が組み合わさっています。補う四物湯と冷(清)ます黄連解毒湯が合わさって温清飲ですね。漢方一貫堂医学の荊芥連翹湯、柴胡清肝湯などの処方はこの温清飲がベースとなっています。

参考:中医基礎理論 、傷寒論解説(大塚先生)、日経DI 2014.02 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

目次