香蘇散は風邪にも神経症にも効果あり

香蘇散・参蘇飮の違い

香蘇散(こうそさん)は、紫蘇、香附子、陳皮といった香りの良い成分を多く含む処方です。

目次

香蘇散の効能効果

香蘇散の効能効果を見てみましょう。

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神経質で、頭痛がして、気分がすぐれず食欲不振を訴えるもの、あるいは頭重、めまい、耳鳴を伴うもの。感冒、頭痛、ジンマ疹、神経衰弱、婦人更年期神経症、神経性月経困難症。

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感冒(風邪)はわかるのですが、なぜか神経症や更年期も併記されています。風邪と神経症が一緒なのは不思議ですよね。まずは、風邪についてから見ていきましょう。

感冒(風邪)

「ちょっと寒いな、ぞくぞくする(悪寒)」といった風邪のごく初期症状によく使う漢方薬です。こういった外気などによる「寒い・ゾクゾク」という状態を漢方では「風寒表証」と呼びます。

風寒表証には葛根湯、麻黄湯など体を温めるような処方がよいのですが、香蘇散も使えます。

で、香蘇散の有用性はそれだけではありません。「気滞」という状態にも使える処方です。気滞は、現代で言うと「ストレス」。ストレスを受けると胃に何か溜まったような気がしますよね。

そんなストレスの症状にも香蘇散は有効です。紫蘇や香附子、陳皮と言った生薬が気滞を改善、ストレスを緩和して気持ちを楽にしてくれます。発散の力があるため、似た効能効果の逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯などにも追加して使う場合もあります。

香蘇散の類方に、加味香蘇散(香蘇散+荊芥+防風+生姜+蔓荊子+秦艽+川芎)という処方もあります。頭の緊張などを取ることが出来るため、香蘇散よりも「頭が少し重だるいなー」という場合に使います。

香蘇散の構成生薬

 

 

香蘇散はこんな時に使います

googleのキーワード検索を見ていたら色々なキーワードとともに検索されていました。ピックアップしてコメントしてみましたが、あくまでわたしの感想です。

症状 コメント
更年期 軽い更年期・プチ鬱なら香蘇散で効果があります。加味逍遙散・女神散なども良いかもしれません。
蕁麻疹 風寒(冷たい風に当たったような)蕁麻疹なら効果があります。より強い風寒なら桂麻各半湯や葛根湯が有効でしょう
胃痛 ストレスによって起こる胃痛ならOKですが基本的に香蘇散だけだと弱いです。安中散などを併用すると良いでしょう。
耳鳴り 耳鳴りには使ったことが無いです
喉痛 風邪の喉痛なら香蘇散では弱くて、駆風解毒湯や銀行解毒片(天津感冒片)を使います
動悸 ストレスからの動悸には使えます。更年期からの動悸など自律神経失調が強く出ている場合は天王補心丹の併用なども考えます

イメージとして香蘇散はハーブティーやアロマで効果があるような場合。軽い女性の悩み(プチ鬱の軽いモノ)や風邪でもちょっと冷えたかなぐらい。そんな状態に効果のある処方です。

軽いからといって「効かないよ~!!」と馬鹿には出来ず、長く服用しても問題ナシな安全な処方です。ですので、

[st-kaiwa5]なんとなく風邪のようなグスグスしたのを繰り返して体調が優れない、、、葛根湯をいつも服用しているんだけど・・・[/st-kaiwa5]

そんな中高年の方には最適です。

香蘇散と参蘇飲の違い

香蘇散の類似処方に参蘇飮(じんそいん)という処方があります。「蘇」という名前の通り蘇葉が共通の処方ですが、参蘇飮は香蘇散に脾胃の虚弱を改善する生薬が入っています

香蘇散・参蘇飮の違い

処方名 類似
香蘇散 蘇葉・甘草・陳皮・生姜 香附子
参蘇飮 蘇葉・甘草・陳皮・生姜 枳実・木香・桔梗・葛根
前胡・半夏・茯苓・人参・大棗

 

香蘇散の症例(口コミ)

 

 

香蘇散と薬膳

ゾクゾクと風邪の引き始めにはネギを一杯かけたラーメン食べたくなりますよね。学生の頃は横綱ラーメンが好きでした。ネギを山盛りにして食べてました・・・。

ネギには気の巡りをよくする作用があります。実際、香蘇散にネギと淡豆鼓(たんとうし:大豆を発酵した生薬)を使った香蘇葱豉湯(こうそそうしとう)という処方もあるぐらいです。

残念ながら香蘇葱豉湯は日本では発売されていません。代案として、香蘇散+薬膳として味噌汁に生姜・山盛りのネギを入れる、、、のが良いかなと考えています。美味しそうですよね!

参考:漢方常用比較方剤学 愛新覚羅啓天
参考:第二十五回和漢医薬学会大会レポートより抜粋
参考:松浦産業/清白傳家

香蘇散のうつ様モデルマウスに対する抗うつ様作用の検討

香蘇散は有害作用がほとんど無く安心して使えるため幅広い年齢層に対して使い易く、北里大学東洋医学総合研究所の漢方外来で頻用されている代表的な気剤である。

モデルマウスによる強制水泳試験における無動時間を欝状態の指標として検討を行なった。ストレス負荷群では、ストレスを負荷していない群と比べて無動時閻の有意な延長が認められたが、香蘇散投与により延長した無動時間を有意に短縮させた。香蘇散をはじめとする漢方処方は多成分系の薬剤であることから、複数の作用点に作用し、その複合効果により薬効を発現していると考えられる。(後略)

 

紹興年間(1131-62) の増補版から収載された処方と分かる。この原典では陳皮・炒香附子・紫蘇葉・炙甘草の4味からなり、現在の処方にある生姜は入っていない。(中略)『世医得効方』(1337)の傷寒門に載る香蘇散は、原方の4味に蒼朮・葱白・生姜が加わっている。これあたりが、江戸前期の『衆方規矩』より4味の香蘇散に、葱白・生姜の加味を指示するルーツとなっているのだろう。さらに現在の生姜が加わった5味の香蘇散にいたったらしい。真柳誠「漢方一話 処方名のいわれ65-香蘇散」『漢方診療』

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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