三叉神経痛で使われる漢方

目次

火箸でえぐられるような痛み「三叉神経痛さんさしんけいつう

三叉神経痛は、俗に顔面神経痛といわれる症状の一つで激痛を伴う顔の痛みです。(注:顔面神経痛は俗称で、三叉神経痛、顔面痙攣、麻痺の総称をいう場合が多い) 近接する血管が神経に触れたことによる突発性の三叉神経痛と、腫瘍などによる慢性の三叉神経痛がありますが、基本的に突発性の三叉神経痛がよく見られます

先輩の薬剤師さんが、急な顔面神経痛にのたうち回ったことがあります。「かなりの痛みで、耐えきれない」と話していました。神経痛ですので、赤くなって腫れるわけでもなく、見た目は変わらないことから、なかなか家族にも悩みが理解されにくい、また、ちょっとしたことで誘発されるため、生活の質(QOL)はかなり低下する、そういった病気です。

三叉神経痛の特徴

三叉神経痛とは、「稲妻が走るような」「針で突き刺されるような」と表現されるほど激烈、わずかな刺激でも痛みが誘発することがある。1回の痛みは5~20秒で、長くても2分以内。発作と発作の間にはまったく痛みはない。顔の片側だけにおこることがほとんど(後略)
参考:三叉神経痛 : 医療相談室 : 医療 : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
Neuroinfo Japan:三叉神経痛

三叉神経痛は文字通り、神経が3つに分かれている神経です。1本の神経が「おでこ、ほお、あご」に分かれるため、痛みは「おでこ、ほお、あご」で起こります。同時に3つとも起こるとは限らないため、虫歯、帯状疱疹後三叉神経痛や顎関節痛、群発性頭痛などと間違えられやすいです。治療法は、鍼灸、薬物、外科療法、神経ブロック、定位放射線治療などが選択されます。

sansasinkeituu

三叉神経痛と西洋薬

抗てんかん薬のカルバマゼピン(テグレトール)は抗てんかん以外にも、躁病、躁鬱病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛に適用を持つお薬です。抗痙攣作用が延髄に働きかけて鎮痛効果を現すと考えられています。1日200mg~400mgから初めて、通常600mg/日までとなっていますので、医師の指導の下で服用してください。このお薬は、副作用が出やすく、吐き気、眠気、注意力低下などが起きやすくなります。また、併用薬で副作用が起きやすく、注意する必要があるため、必ず処方された薬局にて指導してもらいましょう。

三叉神経痛と漢方薬

漢方では風、寒、湿などの邪が経絡の流れを阻害し気血を鬱滞して起こると考えます。これを風湿痺ふうしつひと呼びます。これをベースに血行循環の不良(瘀血)や、イライラストレスなどの肝気欝滞などとあわせ、検討します。これらを治す処方としては、桂枝加朮附湯、麻杏薏甘湯まきょうよくかんとうなども有名ですし、麻横附子細辛湯、葛根湯、川芎茶調散せんきゅうちゃちょうさん、加味逍遥散、桃核承気湯なども使われています。清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)という処方もあり、難治性の頭痛に使われる処方ですが、三叉神経痛に使われることもあります。

[st-card id=1978 label=”” name=”” bgcolor=”” color=”” readmore=”on”]

また、お勧めしているのは、鍼灸との併用。これをすることで、さらに短時間で効果を上げれると考えられます。

ベースの処方 備考
清上蠲痛湯
川芎茶調散
頭痛、偏頭痛、後頭部の頭痛、
悪寒、眩暈などで、風邪頭痛の症状に。
麻杏薏甘湯 風湿在表の全身の疼痛に。麻黄湯から
桂枝を取り除き、ヨクイニンを加えた処方構成です。

 

[st-cmemo fontawesome=”fa-comments” iconcolor=”#F48FB1″ bgcolor=”#FCE4EC” color=”#000000″ iconsize=”100″]なぜ桃核承気湯か::板東先生の著書には、桃核承気湯、もしくは清上蠲痛湯(当帰・川芎・白芷・羌活・独活・防風・蒼朮・麦門冬湯・黄芩・菊花・蔓荊子・細辛・生姜・甘草)を中心に検討するとかかれている。※清上蠲痛湯は川芎茶調散によく似た処方である。 板東先生は三叉神経痛を、瘀血(血行循環不良)によるものと風邪ふうじゃ(冷えや風に当たったこと)によるものの2種類に分け、桃核承気湯と清上蠲痛湯に分けて検討しているのだと推測している。[/st-cmemo]

参考:NIKKEI Drug Infomation 2006.10
山本巌の漢方医学と構造主義:病名漢方治療の実際 板東正造著

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

目次